| はやかわクリニック リウマチについて 〜その2〜 |
6.リウマチの診断はどうやってされる?
関節リウマチには,まだこれがあれば間違いなく診断できるというもの
(ゴールド・スタンダード)はありません。
検診でリウマチ反応がでたので,既にリウマチに罹っていると思って深刻な様子で
受診される方がおられますが,関節症状がない限り,たいていの場合は問題ありません。
リウマチ因子は健常人でも約5%に陽性になりますし,
他の膠原病や肝硬変などのほかの疾患でも陽性になることがあります。
毎年検診を受けていて,途中からリウマチ因子が陽性に転化した10人の方を
最高6年間経過観察したことがありますが,関節リウマチを発症した人は一人もいませんでした。
関節リウマチと診断された患者さんでもリウマチ因子が陽性になるのは80%です。
つまり,20%の患者さんはリウマチ因子が陰性でも関節リウマチに罹っているのです。
それでは,実際の診断がどのようにされるのかといいますと
診断基準(分類基準)にしたがってされています。
アメリカリウマチ学会(ACR)の基準がよく使われています.
1.一時間以上の朝のこわばり
2.3ヵ所以上の関節炎
3.手の関節炎
4.対称性関節炎
5.リウマトイド結節
6.リウマトイド因子
7.X線異常所見
これら7項目のうち4項目以上を満たせば関節リウマチと分類されます。
但し,1〜4は6週間以上持続することが条件となっています。
このうち,初発症状としてもっとも多いのが朝のこわばりです。
起床直後に両手がむくんだ様で,ぎこちない感じのする感覚です。
これは安静後に起きやすいので,昼寝をした後にも起きることがあります。
発症早期では,朝のこわばりと軽度の関節痛だけで,この診断基準に一致しない
患者さんが多く見られます。
特に,6週間以上の症候の持続が条件であるため早期診断という面からは難点があります。
そこで,日本リウマチ学会では早期関節リウマチの診断基準を提唱しました。
1. 3関節以上の圧痛または他動運動痛
2. 2関節以上の腫脹
3. 朝のこわばり
4. リウマトイド結節
5. 赤沈20mm以上の高値またはCRP陽性
6. リウマトイド因子陽性
の6項目中3項目以上を満たせば関節リウマチと診断します。
この他,全身症状として微熱,全身倦怠感,易疲労感などがみられることがあり,
診断の参考にされています。
7.関節以外にも症状がでる?
関節リウマチは免疫の異常が原因で発症する全身性の疾患ですので,
全経過中には約70%に何らかの合併症がみられるといわれています。
関節リウマチが重症なほど合併症がでやすいとされています。
合併症には関節リウマチ自体によるもの,他の疾患の併発によるもの,
関節リウマチの治療に伴ってでてくるものがあります。
1)皮膚病変
リウマチの長い患者さんは真皮層が萎縮して,皮膚が透けるように薄くなって傷つきやすくなります。
ちょっと圧迫しただけで皮膚剥離したり,皮下出血がおきることがあります。
また,肘,後頭部,仙骨(臀部)などの圧迫を受けやすい場所にはリウマチ結節が
できることがあります。
リウマチの活動性が治まってくれば,結節も小さくなります。
皮膚の血管炎を合併すると皮膚潰瘍を起こしてなかなか治らないことがあります。
このような場合は悪性関節リウマチに移行していることがあり,厚生労働省の認定する
特定疾患となります。
しかし,この「悪性」という言葉が癌などの悪性疾患と紛らわしく,
患者さんに不安感を与えることから最近病名の見直しが検討されています。
2)眼病変
もっとも多いのはシェーグレン症候群の合併です。
涙液が減少してドライアイの症状が出てきます。
同時に唾液も少なくなって口の渇きがでます。
ひどい場合には会話が続けられなくなってしまうことがあります。
近年,唾液腺を刺激して唾液分泌を促進させる薬が使われるようなりました。
5割ちょっとの患者さんに有効のようです.
3)呼吸器病変
胸膜炎をおこして胸水が貯まることがあります。
しかし,ほとんどは無症状で大量に貯まって呼吸困難がでるようなことはまれです。
呼吸器病変でよく問題になるのは間質性肺炎です。
肺の下の方からゆっくりと線維化していくもので,比較的男性の患者さんに多いといわれています。
進行は緩やかなことが多く,全部の肺が激しく障害されることは少ないため,
あまり症状がでることはありません。
ひどい場合には肺活量が低下して息切れがしたり,空咳がでたりしますが,
治療の適応になることは少ないです。
問題は同じような間質性肺炎が薬の副作用として起きることです。
この場合は急速に進行することがあり,呼吸困難が出現して入院治療が
必要なことがあります。
薬のなかでも比較的頻度が多く,発見が遅れると重症化しやすいのはリウマトレックスです。
その他リマチル,注射金剤,まれにアザルフィジンでもあります。
しかし,発生頻度はリウマトレックスでも1000人に1〜2人ですので,そんなに多くはありません。
4)消化管病変
消化管の合併症は比較的多くみられますが,リウマチ自体によるものではなく,
ほとんどが鎮痛剤(非ステロイド系抗炎症剤)の副作用かアミロイドーシスの合併によるものです。
数年前に日本リウマチ財団が非ステロイド系抗炎症剤を服用している
リウマチ患者さんの調査をしました。
その結果,15.5%に胃潰瘍がみられ,しかもその4割以上が腹痛を伴っていなかったということでした。
予想よりも副作用が多くて医療者は驚かされましたが,その後抗潰瘍剤の進歩や
副作用の少ない非ステロイド系抗炎症剤が開発されおり胃潰瘍合併率は減少してきています。
また,リウマチの長い患者さんのなかでは,アミロイドというタンパク質が胃や腸に沈着してくることがあります.これはアミロイドーシスといわれ,慢性の下痢,吸収不良をきたして,やっかいな合併症です.
5)腎障害
これもリウマチ自体によるものはほとんどありません。
消化管と同じように薬の副作用かアミロイドーシスによるものです。
薬剤性の場合はリマチル,D−ペニシラミン,金製剤,カルフェニールなどが代表的です。
最初に蛋白尿がでることが多いので,定期的に尿検査を受けていれば早期に発見できます。
薬を減量,中止すればたいてい数ヶ月で軽快します。
二次性腎アミロイドーシスはやがて腎不全に進行して,尿毒症になることがあり,
人工透析を要することがあります。
これは長期に渡って強い炎症が持続した場合であって,
最大の予防策は原病をコントロールすることです。
以上,様々な合併症がみられますが,関節リウマチ自体による合併症はなんといっても
リウマチをよくすることです。
そのためにはやはり,薬物療法が中心になります。
そして,薬物によっても合併症がでることがあり諸刃の剣とえます。
しかし,定期的な診察と検査により早期発見が可能ですからいたずらに副作用ばかりを恐れないで
主治医と信頼関係を築き,前向きな姿勢で療養されることが大切と思います。
8.リウマチの治療は?
関節リウマチの治療は薬物療法が基本で非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs),
副腎皮質ステロイド剤,疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARDs)の3種類がよく用いられます。
従来は非ステロイド系抗炎症剤をまず最初に使い,症状が悪化するに従って
疾患修飾性抗リウマチ剤を段階的に追加するというピラミッド式の治療方法が
標準とされていました。
しかし非ステロイド系抗炎症剤には鎮痛効果はあっても関節破壊を抑制できません。
このため,最近では早期から疾患修飾性抗リウマチ剤の使用が勧められるようになりました。
また,副腎皮質ステロイド剤は強力な抗炎症効果があり鎮痛剤として優れていますが,
用量が増せば副作用も多く特に骨粗鬆症が問題となります。
最近では非ステロイド系抗炎症剤と副腎皮質ステロイド剤は補助的な治療薬として
位置づけられるようになりました。
疾患修飾性抗リウマチ剤の主なものには
免疫調整剤(シオゾール,リドーラ,リマチル,メタルカプターゼ,アザルフィジンEN,モーバー),
免疫抑制剤(リウマトレックス,ブレディニン,イムラン,エンドキサン,ネオーラル,プログラフ)
があります。
これらの薬剤のなかには比較的副作用が多くみられるものがあり,
定期的な診察と血液・尿検査が必要となります
9.生物学的製剤
近年急速に進歩した遺伝子工学的手法により作成された新しい薬剤です。
特定の分子の機能を特異的に抑制することができ,関節リウマチに優れた治療効果を発揮します。
関節痛が軽快するだけではなく,関節破壊をはっきりと抑制できることが証明されています。
これらにはいくつかの種類があり,炎症性サイトカインであるTNFα,IL−1,IL−6を中和したり,
阻害したりする薬剤です。
インフリキシマブ,アダリムマブ,エタネルセプト,アナキンラ,抗IL−6受容体抗体など
多種類があります。
静脈注射か皮下注射で投与されます。
関節リウマチの薬物療法の歴史を変えるのではないかと期待されている薬剤ですが,
いくつかの問題もあります。
サイトカインはもともと生体内で産生されるものであるため,炎症性サイトカインとはいっても
生体にとってまったく無用な物質というわけではありません。
これを長期的に抑制し続けても大丈夫なのかどうかはっきりしていません。
実際に,生物学的製剤の副作用として感染症の増加が指摘されています。
また,関節破壊を抑制できるので早期から使用することが望ましいわけですが,
関節リウマチの原因を取り除くわけではないので,いつまで継続すべきか,
ある程度よくなったら中止できるのか,このあたりがまだよく分かっていません。
それに,かなり高価であることも問題です。
このように,いくつかの問題はあるものの,生物学的製剤によって関節リウマチ薬物療法に
新たな時代が到来していることは確かです。
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